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厳しくなった受動喫煙防止対策
塩谷郡市医師会リレーコラム 「かかりつけ医のことば」第4回(令和2年8月1日)
新型コロナウイルスの影響で、ほとんど注目されませんでしたが、今年の4月から改正健康増進法が全面的に施行され、行政機関や教育機関、医療機関は原則敷地内禁煙、高齢者福祉施設やホテル、事務所などは原則屋内禁煙になりました。客でも従業員でも、喫煙できる場所への未成年者の立ち入りが禁止され、喫煙できる飲食店は、事実上、未成年者を雇うことができなくなりました。とは言え、既存の小規模飲食店は「喫煙可」と表示をすれば店内の喫煙が可能とされ、基準を満たした喫煙専用室であれば設置も認められるなど、やや問題のある法律になっています。
この法律改正の趣旨は、タバコを吸わない人たち、特に従業員や妊婦、子どもたちが他人のタバコの煙を吸わされること(受動喫煙)によって生じる健康被害から守ることです。受動喫煙は、おなかの中の赤ちゃんや子どもたちに悪影響を及ぼし、早産や低出生体重児、乳幼児突然死症候群、小児の気管支炎、中耳炎などを増やします。
受動喫煙によって、心臓疾患や呼吸器疾患、がんなどが増加し、1年間に日本人の1万人以上(1日に30人以上)が、余計に死亡していると推計されています。わずかなタバコの煙でも、くしゃみ、鼻水、動機などの症状が出る方は、害が理解しやすいでしょう。しかし、多くの方は、ちょっと迷惑だと感じる程度で、それほど大きな健康被害があるとは気付きません。タバコの煙のほとんどはガス状なので、マスクやうがい、手洗いをしても、受動喫煙の被害は防げません。換気扇や空気清浄機も、ほとんど効果がないことが知られています。
受動喫煙を防ぐには、屋内を禁煙にすることが肝心です。屋外では、周囲10m以上に煙が拡がるため、受動喫煙のソーシャルディスタンスは最低でも10mと言えるでしょう。